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2013年9月3日火曜日

抗MDA5抗体(抗CADM140抗体)陽性例についての私見

これまで、このブログでも抗CADM140抗体と書いてきましたが、今回から抗MDA5抗体と統一したいと思います。この自己抗体は現在東海大学の佐藤慎二先生によって、CADM(= clinically amyopathic dermatomyopsitis)症例から同定され、抗CADM140抗体と名付けられました(Arthritis & Rheumatism 2005;52:1571)。その後、対応抗原がMDA5(melanoma differentiation-associated gene 5)と判明し、抗MDA5抗体と呼ばれる様になっています。

この自己抗体が重要なのは、難治性の急速進行性間質性肺炎(RP-IP)合併例の標識マーカーと考えられているからです。ある程度年数を積んだ呼吸器内科医であれば誰でも経験したことがあるアレは、私達にとって非常に嫌なものです。急に私達の目の前に現れて、呼吸状態が急速に悪化、ステロイドパルス、IVCY等々やっても効かないこともあり、miserableであったりします。抗ARS抗体陽性例でもRP-IPを合併することがありますが、私達のコホートでは抗MDA5抗体陽性の方が遙かにpoor prognosisでした。Survival curveは、抗ARS抗体陽性例と抗ARS抗体陰性かつ抗MDA5抗体陰性例では差が無いにもかかわらず、抗MDA5抗体陽性例だけが有意差を持っていたのです。(PM/DMのRP-IPでも、抗MDA5抗体陽性と陰性では病態が異なると、今は考えています。)

オリジナルの論文(Arthritis & Rheumatism 2005;52:1571)では、皮膚筋炎48例中8例でこの抗体が陽性であり、この抗体陽性例のうち50%に急速進行性間質性肺炎が合併していました。私達のコホートではほぼ全例に間質性肺炎と思われる陰影を認め、多くが急性から亜急性にIPが悪化していました。しかし、中には慢性経過例もあります。現在もう少し症例を追加して再検討中なので、またいずれ書きたいと思います。

個人的には抗ARS抗体より抗MDA5抗体の方が臨床的に重要だと考えています。この自己抗体が陽性だと判明したら、直ちにfull fightを考えなくてはなりません(注:軽症例では中等量のステロイドで抑え込めることもあるそうですし、海外では慢性経過が多いとの報告もあり、病態に個人差・人種差があるのかもしれません)。
一刻も早く普通に測定可能となることを望んでいます。

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