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2013年3月27日水曜日

喘息とCOPDの鑑別 #5 治療可逆性


喘息は治療によって改善する疾患であると、アレルギー学会のガイドラインでも、GINAでも書かれています。一方、COPDは可逆性が少ない疾患であると理解されています。この両者の鑑別として、最後に治療可逆性について述べてみます。


COPDのステロイド可逆性
COPDICSで短期的にはFEV1が改善します。メタ解析(JAMA 2003;290:2301-2312)でも、FEV1 45mlの改善が示されていますが、2年後にはベースライン以下となっています。ICS+LABAによるTORCH Study(N Engl J Med 2007;356:775-89)では、治療開始6ヶ月後、1年後、2年後でFEV1はベースラインより80ml70ml30mlの改善がみられています。

自検例でみると
私の外来を呼吸困難を主訴に受診され、初回のSpirometoryでβ刺激薬吸入後FEV1% < 70%を満たし、かつ純粋なCOPDではなさそうな方々に、ICSあるいはICS+LABAを使用してみました。その17例のFEV1の経時変化を下に示します。



治療により著明な改善を認める2例は喘息と考えます。それ以外の15例は結果がかなりばらつくことがわかります。それでは、治療可逆性の有無でみてみましょう。



治療開始半年まででFEV1200mlかつ12%改善した症例を青、しなかった症例を赤で示しました。改善した症例でも経時的にFEV1が低下していき、逆に低下しなかった症例でもFEV12年にわたって維持されるケースが存在することがわかります。

自検例から学ぶ重要点
この研究は少数のケースコントールスタディであり、エビデンスレベルとしては非常に低いものになります。しかし非常に大切な2点を教えてくれました。

1.    呼吸機能検査上はCOPDと思われる症例の中にしっかりとした喘息が紛れ込む
2.    初期の治療反応性は、その後の肺機能低下についてあてにならないかもしれない

さて、かなり引っ張ってきましたが、喘息とCOPDの鑑別について次回でまとめとしたいと思います。


このシリーズのエントリー
#1 はじめに
#2 呼吸機能検査
#3 アレルギー素因
#4 胸部CT
#6 まとめ

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