喘息とCOPDの診断には、呼吸機能検査がとても大切です。まずはここから見ていきましょう。
気管支喘息のSpirometory
・Flow-Volume曲線でピークが低下
・β刺激薬吸入による可逆性あり
・DLCOの低下はみられない
・安定期であったり、咳喘息ではベースの呼吸機能が良く、可逆性が見られない
COPDのSpirometory
・下に凸なFlow-Volume曲線
・β刺激薬吸入後でもFEV1%<70%。特に後者は定義です
・DLCOの低下(気腫型の場合は、DLCOよりもDLCO/VAの方が低値)
・β刺激薬による可逆性は、ある場合も無い場合もあり。
このように書くと鑑別できそうに思いますが、実際はそう簡単ではありません。
β刺激薬による可逆性
β刺激薬吸入の前後でFEV1が200mlかつ12%以上改善した場合、可逆性ありと判断します。先に述べたように喘息ではこれを診断根拠とすることもできます。しかし、COPDの5割以上にβへの可逆性がみられたとの報告(Tashkin et al, ERJ 2008)もあり、COPDと喘息の鑑別ではそれほど重視しない方が良いでしょう。
私の少数例の検討でも、診断時のβ可逆性は両者の鑑別・治療効果にあまり役立ちませんでした。
Flow-Volume曲線
喘息もコントロール不良の場合(つまり初診時)は、COPD型のFlow-Volume曲線を描くことがあります(これをCOPD合併とするかどうかはその人それぞれですが、比較的若年で非喫煙者でもこのパターンをみることがあります)。特に鑑別に困る高齢者では末梢気道障害を呈する例が多く、Flow-Volume曲線は多くの場合でCOPD型になります。また、希ですがCOPDでピークが落ちる喘息型パターンをみたことがあります。どうやら手技の問題であったようで、2回目以降はCOPD型になりましたが。
DLCO
DLCOが低下していれば、間質性肺炎や貧血などが無ければCOPDの可能性が高くなります。しかし逆は成り立たないようです。つまりDLCOが良ければ喘息と言えるかというと、そうでもないのです。これも私の少数例の検討ですが、%DLCOが良くてもICS+LABAに対する反応が悪い、あるいは一時的に改善しても経年的に肺機能が悪化するは多く存在しました。
以上まとめますと、喘息、COPDの鑑別に悩む症例では、初回のSpiroでは判断できないと、私は考えています。しかし、施行不要と言っているわけではありません。鑑別できる場合もありますから、必ず施行しましょう。
このシリーズのエントリー
#1 はじめに
#3 アレルギー素因
#4 胸部CT
#5 治療可逆性
#6 まとめ
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