抗ARS抗体症候群(anti-synthetase syndrome)とは、筋炎症状、間質性肺炎、発熱、レイノー症状、関節痛、メカニックハンドを特徴とした、抗ARS抗体陽性例をさします。(Targoff IN, Rheum Dis Clin
North Am 1992;18:455-482) 前回も書いたように抗ARS抗体には現在8種類知られています。全てアミノアシルtRNA合成酵素を対応抗原とした自己抗体であることが共通しています。
これらの自己抗体間で差があるかどうかに関しては、Hamaguchiの論文(PLOS One 8(4): e60442)を読むと良いでしょう。この中では、Jo-1、EJ、PL-7とPL-12、KS、OJで少し臨床像が異なるとしています。前者の方が筋炎症状が目立ち、後者では膠原病としての所見が少なく特発性間質性肺炎とされる割合が高くなるようです。これらの出現頻度ですが、Jo-1が最も多いのは確かなようですが、それ以外の自己抗体の頻度に関しては地域差があるかもしれません。私達の地域ではEJが少なく、PL-12が多いような気がします。
一般的に、抗ARS抗体症候群の症例はステロイド反応性が良いとされていますが、再燃を繰り返すこともあり免疫抑制剤も併用されるケースもあります(その方が多いかも)。画像ではNSIP/OPが混在したようなコンソリデーション主体の陰影が特徴的だと思っていますが、すりガラスの多いケースも見かけるので、画像所見に関してはもう少し検討が必要です。このNSIP/OP hybrid patternは、進行が早いことが多くRP-IP(rapidly progressive IP)に分類されることが多いでしょう。皮膚筋炎だし怖いなって思っても、ステロイドであっさり効いてしまうことが良くあります。中には治療開始後も陰影の改善が見られず、ちょっと焦るのですが、2ヶ月ほどで遅れて改善してくるケースもあります。しかし数少ないですが治療不応性のケースも経験しています。すりガラスと網状影が目立つケースは線維化が進行しているかもしれません。初期治療反応性は良いのですが、再燃が多くて治療に難渋ずるケースもありますし、肺高血圧症が多いとの報告もあり、予後に関しては注意が必要です。
中年の女性で、急性~亜急性に経過する間質性肺炎、皮疹やCK上昇はあれば当然ですが無くても、ANAなど一般に測れる膠原病自己抗体は全て陰性で、HRCTでNSIP/OP hybrid patternをみたら、かなりの確率で抗ARS抗体陽性例だと今の自分では思っています。
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抗ARS抗体 PL-12陽性の者です。非常に勉強になります。
返信削除自分は6年前に間質性肺炎を発症し、今現在も無治療で生活しております。
これからも色々勉強させて下さい。