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2013年8月30日金曜日

Generalist or Specialist ?

先日読んだとあるビジネス本に以下のような文章がありました。
”器用にあらゆる分野で「そこそこできるようになっても」、どの分野にも「ものすごくできる人」がたくさんいます。その結果、色々なことに挑戦した挙げ句、どの分野でも、当落線上でさんざん苦労するはめに陥ります。”
最後の部分が私達の仕事に当てはまるかどうかは分かりませんが、文章の言わんとしていることは正しそうです。



研修医達と話していると、総合内科医を目指したいと言う意見が時々あります。それはすばらしいことだと思います。私も医師になった頃はそう思っていました。しかし、次第に考え方は変わっていき、上記のビジネス本の文章の様になりました。そうして総合内科希望の研修医に向かってこう言います。「その希望はとてもすばらしいことだと思う。僕もそう思っていた。でもね、何でも出来る人は結局便利屋になって、便利屋は使われるだけで終わってしまうんだよ。ココは絶対に誰にも負けないっていうスペシャリティを持つ事も、組織の中でやっていくには大事なことなんだ。ある程度ジェネラルに出来て、かつスペシャリティがある、そんな風になりたいなって思わないか?」 ここから呼吸器内科の勧誘が始まるのですが、そこは今回おいておきます。

この様にさらっと言ってますが、このジェネラルとスペシャルのバランスが実に難しいと、年々実感するようになりました。研修医から内科全体をローテすると、ジェネラルにできるような気がしてきます。そして自分の専門科を学んでいくと、スペシャルが身についてきます。しかし自分の専門科以外は気をつけないと、アップデートされないまま自分の知識がさび付いてしまう事になります。それに自分の専門科の中も更に幾つかの分野に分かれていて、その中でも更に分かれているなんてことになると、真のスペシャリストとは本当にピンポイントのスペシャリストなのだと分かってきます。

「専門家とは、どこまでが事実で、どこから推論かが分かる人だ。」とは、以前に大学でお世話になった恩師の言葉です。何処までが科学的に証明されているのかを知ることは、実はとても大変なことです。論文を孫引き、孫引きと繰り返していき、やっと到達できるのです。そうしてやっと到達しても、絶えずアンテナを張っていないとその知識を維持できません。なので、幅広いスペシャリストは維持するのがとても大変なのだろうと思います。

それでは幅の狭いスペシャリストはどうでしょうか? これは本人にとってはかなり楽です。好きなコースだけ待っていればいいんですから。心カテが物すごーく上手なんだけど、心不全はよくわからないなんていうのは、野球でいえばアウトコースは絶対に打てるけど、ド真ん中は全くダメっていうところでしょう。ダメさにもよるのですが、本当にダメだと、これまた周りからは何となく白い眼でみられてしまいます。しかしスペシャリティからくるメリットが、他のディメリットを圧倒的に上回ってしまえば、非難の量もかなり少なくなります。

長々と書いてきましたが、「ジェネラルとスペシャルのバランスが実に難しい」ってことは、これからの自分にとっても永遠のテーマですね。

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