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2013年12月31日火曜日

吸入指導はなぜ必要か

今年最後の記事として、吸入指導を取り上げます。この話題はとても1度では語れませんが、今回は吸入指導がなぜ必要かと言う点を語りたいと思います。



吸入手技は煩雑
言うまでも無く喘息とCOPDに対する薬物療法の主体は吸入薬です。吸入はステロイド薬など全身投与では副作用の大きい薬剤を目的とする肺だけに届けるというメリットがありますが、吸入するという本人努力が必要となります。内服薬であれば、①薬をシートから取り出す、②水を用意する、③薬を飲む、の3ステップですが、吸入薬では(ディスカスを例に取ると)、①ディスカスを水平に持つ、②カバーを開ける、③レバーを倒す、④息を吐く、⑤速くしっかり吸入する、⑥息を止める、⑦息を吐く、⑧カバーを閉じる、⑩うがいをする、の10ステップが必要になります。

上手く使用できるかは教えてみないとわからない
これらの吸入動作は通常の成人であれば難しいことはありません。薬剤に付属している説明書で十分理解できるでしょう。しかしこの説明書では理解不十分な人たちがいます。そういう方達は診察の時にある程度わかりますが、実際に指導してみて初めてわかることもあります。理解不十分だと判断したら、根気よく指導を繰り返す必要があります。

守るべき大切なポイントがある
ある喘息患者さんが、コントロールが悪くなりました。自覚症状はそれ程悪化していないのですが、ピークフローが低下したまま回復しないのです。私は診察時に目の前で吸入してもらいました。すると、薬剤の吸入は浅く、息止めは全くしていなかったのですぐに吐き出していました。これではせっかくの薬剤が肺に到達していません。吸入指導を再度行い、深く大きく速く吸入することと、数秒間の息止めをしっかり指導しました。これにより、患者さんはピークフローが劇的に改善しました。これは吸入手技が自己流になってしまった例ですが、多くの患者さんで息止めがしっかりと行われていません。またタービュヘイラーでは振ると乾燥剤の音がするため、薬剤を使い切ってしまった後でも吸入を続けてしまう人がいます。これはMDI製剤でも同様のことが起こります。カウンターのついているものは確認することと、カウンター無しの場合は決められた日数で交換するなど、あらかじめ指導する必要があります。

意外に忘れられている1番大切なこと
吸入指導は手技と用法を教えることのみと思っている人がいますが、実は他にも大切なことがあります。それは何故吸入薬を使用する必要があるのか教えることです。喘息であれば発作が起こらないようにすること、仕事や学校を休まないために、混雑している救急外来を受診しないためにです。COPDなら日常の活動度を上げるために、もっと具体的に散歩の距離を伸ばすためにや、お風呂にゆっくり入るためになどでしょう。この説明は、逆に言えば吸入薬を使用しないと困ったことが起こるのだとわかってもらうことです。これが無いと吸入療法を長期間継続できません。

この他にも吸入指導は患者さんとのコミュニケーションとなることも大きなメリットです。
吸入指導については、またいずれ色々と語ってみたいと思います。

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