かかりつけ医との連携
オピオイドの持続皮下注が確立されるに従い、医師の技量によっては在宅でも入院とほぼ同様の治療を受けられるようになりました。General practionerとの連携はとても大切なものとなっています。もともとかかりつけ医がいれば良いですが、いない場合はこちらから勧めたり、探してもらったりします。
まず最初の問題は、連携を開始するタイミングです。何もすることがないのに紹介しても、受け手の医師が困ります。定期受診の外来で、風邪などで「ちょっと体調を崩してA医院にかかった。」と言われたときはチャンスです。「これまでの情報を先方に送りますね。これからも軽い体調不良は、そちらで観てもらいましょうね。」と勧めてみます。当院では予約外での診療にとても時間がかかることを知っている患者さんは、すんなり受け入れてくれます。また、「ちょっと食欲が落ちてきている。」と言われたときも同じです。「時々点滴してもらいましょうか。」と言って、連携を開始します。
紹介されることに拒否感を示す患者さんや家族もいます。捨てられた、と思うのでしょう。ですから、次回の予約はしっかりとります。「これからも主治医は私です。これまで通り、観させていただきますからね。」と、はっきり伝えます。体力的に通院が難しくなってきているときも、「ご家族だけでも良いですので、受診して状況を教えてください。」と話しています。在宅の受け手が上手いと、次第に在宅医が診療をリードするようになってきます。家族と在宅医に信頼関係ができれば、私は聞き役に回ります。
最期をどこで過ごしますか?
状態が悪くなってきた時、あるいはなりそうな時。家族や本人と話しておくことがあります。「この先もっともっと状態が悪くなった時、どこで過ごしたいと思いますか?」 なかなか切り出しにくい言葉ですが、チャンスをうかがいながらこの話をします。しかし、最期に過ごす場所を、あらかじめ決めておく必要はありません。状況はどう変わるかわかりませんから、臨機応変に対応する必要があります。「最期は家がいいな。」と言われても、「そうですね。そうできるよう私も努力します。だけど思わぬ事態の場合は、状況に応じて相談しましょうね。」と話し、自分の意見は撤回可能であることを意識させます。
また、この先の見通しを伝えておく方が良いことも多いです。患者さんや家族は、この先どうなっていくのか不安ですから。家族には「新年を迎えるのは難しいかも」とか、「この夏をは乗り越えられないかも」など、漠然としていても良いのである程度の目安を伝えます。患者さんが受容できそうなら、本人にも話すこともしばしばあります。
相手を思いやる気持ちを忘れずに
癌患者さんに限らず、言いにくい話をする時に心掛けることは、「相手の気持ちを思いやること」です。こちらの都合でかかりつけ医を紹介するのではなく、患者さんのために良いと思うので勧めるのだという気持ちが無ければ、相手に嫌な感覚を与えるだけです。医学的な事実や数字だけを告げるのも、相手にはピンと来ません。また相手を思いやることと、厳しい話をしないことはイコールではありません。
当然ですが、話すときには相手の顔をしっかり見つめます。私は時間を節約するために診療の際にPC操作をしながら話すことも多いのですが、しっかり話すときは当然向き合います。家族の同席も必須です。
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