蜂巣肺=ハニカムは、呼吸器内科医であっても難しいと思っている人が多いんじゃないでしょうか。ハニカムと言い切ること=病理組織型でUIP patternと考えるので、特発性であればIPFと診断する事になります。Panther trialの結果や抗線維化薬の登場によりIPFの治療が変化してきていますので、臨床の場でのハニカムの重要度はますます高くなっています。
本邦では欧米に比べてハニカムと診断する基準が厳しいと言われています。また、呼吸器科医や放射線科読影医であっても、びまん性肺疾患に詳しい人ほど慎重になるでしょう。ある権威はハニカムだといい、別の権威はハニカムとは言えないとしたりする。そんなことが良く起こるのです。
歴史的な面から
20年ほど前にNSIPの疾患概念が登場してきて、UIPとの鑑別にハニカムが重要だと考えられるようになりました。IPFの治療は現在においても確定していません。びまんを得意とする呼吸器科医はハニカム=UIP=有効な治療法なしであったため、ハニカムの診断に慎重でした。典型的なモノ以外は心の中ではハニカムだと思いながら、「ハニカム様の所見」とごまかしていることも私にはよくありました。少しでも予後を改善できるのならという思いから、ステロイド+免疫抑制剤治療が行われることもありました。病理医もその頃はどっちつかずの症例では、NSIPに入れる傾向にあったと思います。このあたりは、癌のステージングで「疑わしきは患者にとって良い方にとらえる」のと似ています。しかし、ATS projectでのNSIPの“純化”に伴い、以後はUIPの特徴を持つものはUIPと組織学的にも診断されるようになってきていて、相対的にUIPと診断される割合が高くなっています。
ハニカムの診断は難しいのか?
びまんを得意とする医師にとっては、病理学的にUIP病変の存在を診断することはかなりの率で可能となってきています。それはハニカムだけに頼るのではなく、病変の分布(胸膜直下主体)、heterogenityの存在などを合わせて判断します。このあたりは、確かに経験が必要な部分です。ハニカム診断の難しさは、その判断が治療・予後を決めてしまうからです。慣れていない医師にとっては、「それで良いのか?」と思うのも無理はありません。しかし、私達呼吸器内科は放射線読影医ではありません。CT画像のみで判断するのではなく、臨床経過、採血データ、BAL所見、呼吸機能検査からもある程度疾患を絞ることが可能です。また、それでも悩むような症例であれば、専門家もまた悩むでしょうから、VATSへということになるでしょう。(ちなみに、私は牽引性気管支拡張と蜂巣肺を厳密に区別できるとは考えていません。)
実際の取り扱いについて
びまん性肺疾患が得意でないのであれば、ハニカムの判断は慎重になるべきです。特に上葉のみにある場合や、すりガラスが目立つ場合、粒状影がある場合などは、専門医へのコンサルトが良いでしょう。現時点ではまだ、「疑わしきは罰せず」だと思っていますので、わずかな所見のみでハニカムありとしない方が良いでしょう。癌があるとき、それは問題です。これに関しては、もう少しエビデンスが出てくるのを待ちたいと思います。
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